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京都地方裁判所 昭和60年(ワ)1401号 判決

原告

京都信用保証協会

右代表者理事

松尾賢一郎

右訴訟代理人弁護士

寺田武彦

被告

竹蔦達男

主文

一  被告は、原告に対し、金二六三万一三三九円及びこれに対する昭和五六年四月二一日以降支払済みに至るまで年一四・六%の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金五二六万二六七九円及びこれに対する昭和五六年四月二一日から支払済みに至るまで年一四・六%の割合による金員を連帯して支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  請求原因

一  原告は、訴外北川満の委託により、昭和五四年一一月二日、同人との間で左記内容の信用保証委託契約を締結した。

1  北川満が訴外株式会社京都銀行東向日支店(以下訴外銀行と略称する)から金員を借り受けるにつき、原告は貸付金五〇〇万円の範囲で北川満のために信用保証協会法に基づく保証を行なう。

2  原告が右保証に基づき北川満のために訴外銀行に弁済したときは、北川満は原告に対し、直ちに右弁済額及びこれに対する弁済日の翌日から完済に至るまで年一四・六%の割合による損害金を支払う。

二  被告は、前記信用保証委託契約の締結に際し、右契約上の債務者である北川満が右保証委託契約に基づき原告に対して負担する一切の債務について連帯保証した。

三  北川満は、前記原告の保証に基づき昭和五四年一一月二日訴外銀行から金五〇〇万円を利息年五・五%、返済条件昭和五四年一二月から同五九年一一月まで毎月八日限り金八万四〇〇〇円あて(但し、最終回のみ金四万四〇〇〇円)の分割払いの約束により借り入れ、さらに、右借り入れに際し、右分割弁済金の支払を一回でも怠つたときは、訴外銀行の請求によつて期限の利益を喪失して残額を即時返済するとの約定をした。

四  ところで北川満は、前記保証に基づき借入した債務につき、約定通りの返済を履行せず昭和五五年一月八日支払分以降の支払を怠つたため、訴外銀行は、昭和五六年三月二日到達の内容証明郵便により、北川満に対し、同人が前記保証に基づき借り入れした債務の遅滞金支払の催告ならびに支払がない場合期限の利益を喪失する旨請求したが、北川満は、右催告にかかる債務の支払をしなかつた。

五  そこで、原告は昭和五六年四月二〇日前記保証に基づき訴外銀行に対し、元金四九一万六〇〇〇円、利息金三四万六六七九円の合計金五二六万二六七九円を代位弁済した。

六  よつて、原告は被告に対し、求償債権元金五二六万二六七九円、及びこれに対する昭和五六年四月二一日(原告が支払をした翌日)以降支払済みに至るまで、年一四・六%の割合による損害金の支払を求める。

第三  請求原因に対する答弁

請求原因事実はすべて争う。仮に被告が保証責任を負うとしても金二五〇万円の範囲である。

第四  証拠〈省略〉

理由

一〈証拠〉によれば請求原因一の事実が認められ、これを覆すに足る証拠はない。

二請求原因二の連帯保証の成否についてみるに、甲第一号証の一(信用保証委託契約書)の連帯保証人欄の「竹島達男」の署名とその名下の押印が被告によつてなされたことは当事者間に争いがないところ、右甲第一号証の一の第一条中の金額欄の「5,000,000」の数字の記入が被告の意思に基づいてなされたか検討するに、〈証拠〉によれば、被告は、仕事上知り合いの北川満に頼まれて、同人がダンプカーの購入資金二五〇万円を原告の保証のもとに借り入れるのにつき、原告に対し金二五〇万円の連帯保証人になることを承諾し、甲第一号証の一の連帯保証人欄に署名押印をしたが、そのとき同号証第一条中の金額欄は空白のままであつたこと、そして右甲第一号証の一が北川満によつて原告に持参された後の昭和五四年一〇月二二日ころ、原告は被告に対し同日付の照会書(被告が金二五〇万円につき北川満のため連帯保証人になる意思を有するか否かを確認するためのもの)を発し、右書面はそのころ被告に到達したこと、その後北川満は、先にその父北川光義が、妻よし子を連帯保証人として原告の保証のもとに融資を受け、返済できず、昭和五四年五月二一日原告に元利合計金二三六万六三八四円の代位弁済をしてもらつていた(父北川光義の)債務を原告に支払うため、原告と話し合つて前記保証委託の金額を金二五〇万円から金五〇〇万円に増額したこと、そのため原告の職員において甲第一号証の一の第一条中の(空白のままになつていた)金額欄に「5,000,000」の数字を記入するに至つたことが明らかである。しかしながら、(一)被告が、北川満の父光義の焦げ付き債務の分についても連帯保証をし、当初承諾した金二五〇万円の二倍の金五〇〇万円の債務を負担するほどまでに北川満及びその父光義と親密な間柄であつたことを認めるに足る証拠はないし、(二)前顕甲第一一号証の下部には、「10/30 A.M11.25本人と電話にて保証意思確認」と記載されているけれども、右記載自体からは金二五〇万円と金五〇〇万円のいずれについての保証意思の確認であるのか分明でないし、(三)田中証言の中には被告に対し電話で金五〇〇万円の保証意思の確認をした旨の供述部分があるけれども、電話による保証意思の確認という方法は、後日訴訟で争われることが少くなく、その確実性の担保が充分とはいえないから、信用保証委託契約書の連帯保証人に署名がありその名下に実印が押捺されている右契約書が原告に送付されてきた場合に、これに加えて補充的な手段として前記電話による保証意思の確認をするのであれば、それはそれなりの合理性を有するといえるけれども、当初予定されていた保証委託金額に委託者の父親の焦げ付き債務弁済のための金額を上乗せすることにしたため保証委託金額が当初のそれの二倍にも増額されるに至つたような場合において、当初の金額について連帯保証人となることを承諾していた者に対し右増額分についても連帯保証をする意思があるか否かを確認するのに、前記のように確実性の担保の充分とはいえない(電話による保証意思)確認方法を用いるだけで足るものか疑問の余地があり、田中証言中前記供述部分は、被告が金五〇〇万円について連帯保証する旨電話で回答したことはない旨供述していることを参酌すると、結局決め手のない水掛論のような状態になつてしまい、採用することができない。そして他に被告が金二五〇万円を超えて金五〇〇万円全額につき連帯保証をする意思を有していたことを認めるに足る証拠はない。そうしてみると、甲第一号証の一の第一条の金額欄には「5,000,000」と記入されているけれども、そのうち金二五〇万円の限度が被告の意思に基づく記入であるから、被告は元金二五〇万円について原告との間で連帯保証契約を締結したものと認めるのが相当である。

三〈証拠〉によれば、請求原因三ないし五の事実が認められ、これを左右するに足る証拠はない。

四そうしてみると、被告は、原告に対し、主債務者北川満の負担する求償債権元本金五二六万二六七九円の半額である二六三万一三三九円とこれに対する昭和五六年四月二一日(原告が代位弁済をした日の翌日)から支払済みに至るまで年一四・六%の割合による遅延損害金を支払う義務があるので、右の限度で原告の請求を正当として認容し、その余の請求は失当であるから棄却することとし、民訴法八九条、九二条、一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官重吉孝一郎)

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